死すべき定め


私の祖父が亡くなった時、祖母はこう言いました。
「私たちはずっと生きていられると思ってた。」

”ずっと”まではいかないまでも、10年、20年単位でまだまだ生きていられると思って日々を過ごしています。
死すべき定めにあること、それが突然やってくることを認識するには、早いに越したことはない。
そんなことを教えてくれる本を読みました。

死すべき定め
アトゥール・ガワンデ著

本書は終末期医療の現場で何が起きているのかを丁寧に個人の生き方を通して語りかけています。

 

スポンサーリンク

生きる意味

おかれた状況とこれからの可能性を本人がどう理解しているか?
恐れていることと望んでいることは何なのか?
何を犠牲にしてもよく、何を犠牲にするのが駄目なのか?
そしてこの理解を深めるのに役に立つ最善の行動とは何か?

『死すべき定め』より

死すべき定めにあること、残された時間が短いと気がついたとき、上記の質問によって優先順位をはっきりさせることが重要だと本書では提示しています。

私の場合、座骨神経痛で歩くこともままならない状況になったとき、いつか、元通りの身体に戻ると思っていました。
しかし、そうはなっていません。
お陰さまで、日常生活に支障のないところまで回復しましたが、それでも違和感は残っています。

この違和感は、私に健康のありがたさを忘れさせないための重要な装置になっています。
以前のようにヨーガをすることはできなくなりました。
その分、少しできるだけで有難いなという思いが湧いてきます。
身体の声に耳を傾けるようになりました。

うつになったとき、仕事のことで心をすり減らすなんてバカバカしいと気がつきました。

会社に都合のいいように使われて、いらなくなったらポイなのが現実。
結局は、経費を安くあげて利益を最大にすることが会社の見ているものだとわかりました。

こんな状況で、生きる意味をどこに見出すか?
これは、アイデンティティの問題になります。

己自身を越えた大義を人は求めていることにあると彼は信じた。彼によればこれは内在的な人間のニードである。大義は大きなこと(家族や国、主義)でもいいし、小さなこと(建築計画やペットの世話)でもいい。重要なことは、大義に対して価値を見いだしていること、それに対して犠牲を払ってもよいと感じていることであり、それを通じて人は自分の命に意味を持たせるのである。

『死すべき定め』より

”私”というものを超えた何か大きなものに対して意義を見出したとき、そこに生きる意味が生まれる。

本書ではスピリチュアリティには触れることなく、具象な生活の中で何を大切にしたいのか、そのために何を諦めてもいいのかを軸に展開されていきます。

人によっては、生きる意味がスピリチュアリティなのかもしれません。

 

医療の果たす役割

人は欲望の生きものです。
欲があるから生きていられるし、欲があるから”便利”な社会が作られました。

自身の人生に限界があることを自覚するようになると、人はあまり多くを求めないようになる。さらなる富を求めなくなる。さらなる権力も追わなくなる。可能なかぎり、世界での自分の人生の物語をそのままつむぎつづけさせてほしいと願う。

『死すべき定め』より

”可能なかぎり、世界での自分の人生の物語をそのままつむぎつづけさせてほしい”

これは、可能な限り長生きしたいという意味ではありません。
可能な限り、自分の生きる意味を失うことなく生きたい。
つまり、生きる意味を失ってまで、生きることだけを目指すのではないということです。

そうすると、医療が果たす役割が変わってきます。

ホスピスは看護師や医師、聖職者、ソーシャルワーカーを動員して、死の病いを抱えた人が今その時点で可能なかぎりの豊かな人生を送れるように援助することがゴールである。

何ができるかどうかにはかかわらず、医療行為やそれに伴うリスクや犠牲が正当化されるのは、それらが患者のより大きな目標に役立つときだけである。それを忘れている場合、苦痛を伴う医療は野蛮な行為になる。

『死すべき定め』より

1日でも長く生きられる可能性だけを追求していくことは科学として意味があるのかもしれません。
しかし、残りの日々を苦しみの中で生きることになったら・・・

私の祖父は79歳のときに肺がんの手術を受けました。
90歳で天寿を全うするまで、苦しい日々を送っていたことがよみがえってきます。
手術は成功しましたが、歩くこともままならなくなり、いつも辛そうにしていました。

「辛い、辛い」、「なんで自分だけこんな辛い思いをしないといけないのか」と言っていたことを思い出します。

病者や老人の治療において私たちが犯すもっとも残酷な過ちとは、単なる安全や寿命以上に大切なことが人にはあることを無視してしまうことである。

『死すべき定め』より

 

まとめ

今のところ、命まで脅かす状態になっていない身からすると、やっぱりどこか他人事のように感じるのも事実です。しかし、自分の身近にいる人がこのような状況になったら、本書に書かれていることを思い出したいです。

 

スポンサーリンク
2017-05-06 | Posted in No Comments » 

関連記事

Comment





Comment



CAPTCHA